静かに佇むハンガーが、店長を狂わす
日々お店を営業していると、どうしても見たくない光景がある。
それは、心の準備もないまま突然やってくる。
視界に飛び込んでくる“あの存在”。
――物寂しげに、ひとりで佇む 裸のハンガー。
「っあ!やっば!え?え?……」
「何掛かっとった?え?無い?盗られた??」
「え、あったよね!?今日さっきまであったよね!?」
語彙力は秒速で小学生以下。
店長という肩書きは、この瞬間だけ“ただの慌てた人”に変わる。
脳内では警報が鳴り、BGMは完全にサスペンス。
上司の鬼の顔が浮かぶ。
スタッフに声をかけようか迷うが、
“もし本当に盗られてたらどうしよう”という謎のプライドが邪魔をする。
そして数十秒後――
バックヤードの隅に、ひっそりと掛けられた服を発見。
犯人:僕。
被害者:ハンガー。
事件:未遂。
「……いや、下げたん俺やん。」
誰にも気づかれないように、そっと服を戻す店長。
しかしスタッフはすべてを察している。
「店長、今日も予想外ですね」
はい、今日も平常運転です。